【2019開催】97.音楽療法士が語る ホスピスの日常

2019年10月8日(火)

場所:愛知国際病院 ホスピス棟

愛知国際病院のHPはこちら

 

ホスピスという言葉をお聞きになったことはありますか?

 

言葉は知ってはいても、普段なかなか足を踏み入れることのない、

ホスピス病棟での開催とあって、9人の方が、参加されました。

 

年齢層は、30-80歳代(と見受けられる)男女で、関心の深さが感じられました。

 

司会の諸石さんによる丁寧な解説で会がスタートしました。

続いて、副師長の水野さんによる、ホスピス病棟の現状のお話を聞きました。

ここ、愛知国際病院のホスピス棟は、市民の皆様の熱心な「ホスピス運動」により、

1999年に愛知県初のホスピス病棟として、設立されました。

 

「自宅のようなホスピスを ホスピスを自宅のように」との想いが

随所に反映されています。

 

(熱心にメモを取られる参加者さん)

 

ボランティアコーディネーターの中島さんより、

このホスピス病棟で活躍なさっている、

ボランティアグループ「紫苑」の説明がありました。

(紫苑の名の由来であるシオンのお花の写真です)

現在43名の方が、ボランティア登録され、そのお志により、

洗濯、掃除、片付け、生け花、ティータームのサービスが提供されています。

病棟のいろいろな場所に、生花が飾られています。

昨今、感染症防止などの観点から、病院では生花の持ち込みが禁止されている場合が多いですね。

 

ここではお花一輪の持つ力が、より鮮明に浮かび上がっていました。

次に、本日のメインテーマである音楽療法について、

音楽療法士の村瀬 香さんのお話です。

村瀬さんは、音楽大学、大学院をご卒業で日本音楽療法学会認定の音楽療法士さんで

いらっしゃいます。

 

マリンバの演奏 の近藤 幹夫さんも、

音楽大学、大学院をご卒業で同じく音楽療法士として、

こちらのホスピスで音楽を通して、患者様に向き合っていらっしゃいます。

 

ホスピスでは、患者様の病態は安定することは少なく、

音楽療法士として来訪される折は、

いつも今日はどのような状態であるのかわからないまま、

病棟にいらっしゃるそうです。

常に、その場で何が出来るのかを考えていくのが、

音楽療法士の務めです、とおっしゃっていました。

 

まずは、普段どのような演奏をしているのか、お聞きください、とのことで、

ミニコンサートが始まりました。

 

マリンバの丸い音色、ゆったりとしてピアノの響きで

映画「オズの魔法使い」より

『オーバー・ザ・レインボー』

 

映画「明日に向かって撃て」より

『雨にぬれても』

 

映画「サウンド・オブ。ミュージック」より

『サウンド・オブ・ミュージック』

『私のお気に入り』

『エーデルワイス』

3曲をメドレーで演奏してくださいました。

 

途中、ボランティアさんによるお茶のサービスがありました。

これは、普段から行われている日常を味わう大切な時間。

ここでは、年中、かき氷やアイスクリームもメニューにあるんです。

 

それは、病状により食欲の落ちた患者様でも、

口当たりの良い、かき氷や、アイスクリームなら喉を通りやすく、

少しでも食べる楽しみを味わっていただこう、との想いからなのです。

 

 

私たちの生活は、いつも音楽に囲まれているんですよ、と村瀬さんはおっしゃいます。

お腹にいるときには、お母さんの声を、

生まれてからは子守唄を、

幼いころは童謡を、

長じてからは、それぞれが好きな歌を・・・

 

 

「ここからは、いつもの音楽の時間と同じように、

皆様からのリクエストで進めてまいります。

ぜひ、お好きな曲をリクエストしてください。」

手元には、こちらの冊子が配られました。

中には、50曲以上もの歌詞カードが綴られています。

どれも、手書きなんです。

参加者さんのリクエストで、

「この広い野原いっぱい」

「見上げてごらん 夜の星を」

 

ここで、ボランティアさんたちから、面白いものが、各自に手渡されました。

(これ、なんだと思いますか?)

実は、マラカスなんです。

音楽を聴いていただくことも、大事な時間ですが、

もし病状が許すなら、参加もしていただけたらと考えていて、

そのための楽器なんですよ、と。

「インパネの娘」に合わせて、私たち参加者も、マラカスで参加。

初めて同士でも、音楽に合わせてリズムを奏でるのは、とっても楽しかったです。

 

「小さい秋見つけた」

「君といつまでも」

患者であるご主人様と、奥様のエピソードを披露してくださいました。

もう、口のきけなくなった状態であったご主人なら、きっとこの曲を選びます、と

奥様がおっしゃり、演奏をしたそうです。

その時、奥様にも、村瀬さんたちにも、

ご主人がいらっしゃるのが、はっきり感じられたそうです。

「星影のワルツ」

これは、看病をし尽くした奥様からのリクエストだったそうです。

この曲を演奏するたび、あの時のことをいつも思い出します、と。

 

演奏終了後は、実際に2階のホスピス病棟を見学させていただきました。

 

中央の広間では、押し花の準備がされていました。

実際に、患者様自身が押し花を楽しむことは、少ないでしょう。

でも、病棟に詰めているご家族の気持ちは、少しは慰められるかもしれません。

実際の病室からは、手に取るように、お庭の花々が見ることができます。

枕元には、ボランティアさんたちによる、お花が生けられています。

このニワトリちゃんは、ドアストッパーです。

音楽の時間に、患者様は、歩いて、車いすで、ベッドのまま参集されます。

それも叶わなくとも、少しでも音楽を、という方は、このドアストッパーで、

好きなだけ自室のドアを開けておけるように、との配慮です。

ナースステーションには、アロマポットがありました。

村瀬さんは、おっしゃいました。

「最後まで耳は聞こえていることを、日々実感しています」と。

 

「会うべき糸に出会えたことを、人は仕合せと呼びます」  ~糸~中島みゆき より