74.いろんなスパイスで本場インドの家庭の味体験
2017年11月24日
会場:アジア保健研修所(AHI)
案内人:ムルガン・カリラトナムさん NGO「貧困者のための奉仕協会」代表 通称カリさん
:林 かぐみさん アジア保健研修所 理事
紅葉の美しいこの季節に、インドのカリラトナムさんを講師にお迎えして、
本場インドの家庭の味を楽しむと同時に、インドの「今」をお聞きする、という会が行われました。
まずは、世界中、どこに住んでいる人にとっても欠かすことのできない「食」を通して、
お互いの理解が進むように、と、キッチンで参加者一同が集まって、
カリさんが作ってくださるカレーの手さばきを拝見しました。
窓の外は、真っ青の空と、美しい紅葉に木々。
今日のお献立はこちら!
カリさんが、慣れた手つきで進めてくださいます。
たくさんのスパイスを、粒のまま、順に油に投入していきます。
一つ一つのスパイスに、効用があり、
投入していく順番にも、意味があり、
さながら漢方のよう。
医食同源の気持ちが籠っているのです。
同時に、3つの料理を進めるため、炒める工程は参加者の方もお手伝い。
ですが、肝心のスパイス投入のタイミングや、
味見は、カリさんの勘が頼りです。
これは、野菜のカレー
こちらは、レモンライス。
えっ、ご飯を炒めるときに、レモン???
とっても美味しくできました。
こちらは、チキン ブリヤニを炊き込むためのスープ
ここに、研いだインディアンライスを投入し、ゆっくり煮込んでいきます。
そのインディアンライスが、こちら!
びっくりするほど、細長ーいお米なんです。
日本人の私たちは、炊飯器に研いだお米をセットするときには、
水分量にとても気を使いますが、
カリさんはすべて目分量。
参加者一同、ちょっと不安がよぎりました・・・
カリさんは、鍋の底から何度もひっくり返し、
お米の様子を見ています。
(えっ、炊いている途中にお米に触ってもいいの??)
料理の途中ではありますが、
別室に移動して、カリさんのインドの今を伝える講座が始まりました。
カリさんは、インド生まれの59歳です。
24年前に、アジア保健研修所に研修生として学びにいらっしゃいました。
そのご縁で、今回、インドの家庭の味を振舞いつつ、
インドのお話をしてくださることになったのです。
まずは、アジア保健研修所 理事の林さんより、
カリさんと当所とのつながりを説明していただきました。
アジア保健研修所は25年以上にわたり、
アジアの人々の一人一人の健康を守り、
その健康を守る人作りを実践しているNGO団体です。
その息の長い活動が認められ、今では小学校6年生の社会の教科書にも
当所のことは記載されているんです。
皆様、インドにはカースト制度というものがあるのをご存知ですか?
さらに、
そのカースト制度にすら属さない「アウトカースト」と呼ばれる人たちがいることをご存知でしょうか?
カリさんは、その「アウトカースト」として生を受けました。
幼いころ、学校などで制度からくる偏見によりいじめを受けたりしたそうです。
ですが、学業の成績の良かったカリさんは、
両親が20年間の出稼ぎによって得たお金により、
普通では考えられない、大学への進学を遂げることができました。
残念ながら、カリさんの村では、
カリさん以前、
カリさん以降に大学へ進学した方はいらっしゃらないそうです。
たった一人、学びを修めたものとして、
デモの先頭に立つなどして、人々を率いて制度の矛盾に立ち向かっていました。
その頃、日本のアジア保健研修所で学ぶ機会を得て、
外の世界を知り、考え方はどんどん変化していったそうです。
「対立」では何も解決しないと悟ったカリさんは、
「対話」による解決を目指し、今もその途中だそうです。
カリさんの娘さん方は、
インドの企業グループの米国支店で働いたり、
欧州へ留学するなど、
さらに世界的な視野を持てる環境に育っていらっしゃるそうです。
ここで、先ほど、カリさんが作ってくださったチキン ブリヤニが程よく蒸らし上がったということで、
ランチタイムとなりました。
じゃーん、出来上がり!
カリさんの細心の注意と、五感のおかげで、
とっても良い具合に炊き上がりました。
チキン ブリヤニ
カレー味の鶏肉入り炊き込みご飯です。
4種のカレーを白いご飯を中心に盛り付けてみました。
どのカレーも、スパイスを粒のまま使用しているのに、
そんなことは感じさせないほど、食べやすく仕上がっています。
4種それぞれに味が違います。
今回は、普段よりずっとチリペッパーを控えて作ったくださったようですが、
それでも、食した後から、ヒリヒリとホットな刺激がやってきます。
今日は特別に、奥様お手製のお菓子もご持参くださいました。
一番右のショウガの味の甘いお団子は、なんだか日本にもありそうな味でした。
IT企業など、世界の最先端の企業を有するインドですが、一方で、
古くからの因習にとらわれた制度が残るなど、
アジアの大国でありながら、課題も抱えていることを知りました。
自らを「ダリット」と称する若者が、社会の前面で活躍し始めるなど、
インドの社会にも変化は起きてきているそうです。
「カースト制度がなくなって、初めてインドの民主主義が成立する」と
優しいほほえみの中で、
厳しい口調で語っていたカリさん。
共に、食事をすることで、
ほんのひと時しか過ごしていないけれど、
何十年にも渡る胸の中の想いに触れさせていただいたように思います。
美味しいカレーをありがとうございました。
この記事を書いた人
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まちミル博覧会 応援スタッフ
好きな食べ物:しいたけ
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